Jon Martine WSを終えて

2020年7月7日ワークショップ

Jonの神経マニピュレーション・ワークショップでは、断片的だった知識の統合と新たな探究心が生まれ、実り多いものだった。Robert Schleip博士の筋膜の可塑性に関する有名な文献(*1)を読んだ直後だったので、なおさらだったのかもしれない。その文献では、マッサージ、鍼、ロルフィングなどの手技で筋膜がすぐに緩む現象は、機械的な圧力による局所変化だけでは説明がつかず、自律神経系の変化が引き起こす全身の自己調整という神経力学モデルが提案されている。これは、今回のWSのベースの一つである皮ふ神経モジュレーションの「ヒルトンの法則」(ある臓器や関節の表面を覆う皮神経の枝は、深層の神経とつながり、その関節包、靭帯、筋肉、臓器の神経叢に影響を与える)とも矛盾しない。
また、慢性痛は記憶と結びついた脳の解釈にすぎない、と一応は理解できる仮説について、感覚入力と運動出力のバランスを一致させると脳が痛みに占領されずに済むという実践的なアドバイスが得られたのは大きい。代替医療を否定する根拠として名高いプラシーボ効果よりも、ラベルを貼られて悲観するノーシーボ効果のほうが実は厄介という話も自律神経を含めた系では大いにうなずける。
技術の面では、神経、靭帯や血管の走行を辿り、これらを区別する触感が、僕の頭の中の筋膜という大雑把な身体地図を一段階詳細な倍率に書き換えてくれた。また、神経や筋膜の癒着を開放するテクニックは、直接届かない胸郭や骨盤やお腹の中の筋膜の動きをも改善できることを実感した。特に、研修4日目の後に温泉で僕自身の腰の神経と血管に試したところ、持病の腰痛が劇的に改善されたのには驚いた。頭と顔へのワークは終わった後も開放感がしばらく続いた。研修の合間に、第8セッションと個別セッションの2名にこれらの技を適用したところ、いずれも大きな変化を実感され喜んでいただけた。
ジョンの手は大きく厚いが、タッチがとてもソフトで安定している。実習を繰り返すにつれ、僕の手も次第に柔らかくなるように感じた。このワークショップはベーシッククラスで習った「構造的統合」には変わりはないが、さらに精密な手技と観察力を学んだフェーズ4、と僕の中で勝手に位置づけられた。
(*1)  Schleip R. Fascial plasticity – a new neurobiological explanation. Journal of Bodywork and Movement Therapies, 7(1):11-19, 7(2):104-116, 2003.
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